DOHC1802
第31巻第5号                         2018/2/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]
(kazuo.mori[at-sign]t.matsu.ac.jp)
http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/dohc/dohchp-j.html

 あっと言う間に2月になってしまい、発行が遅れました。先月号を元日に発行した翌日にカナダで孫娘が生まれました。出生届けは現地時間で出すそうで、元日生まれとなりました。「七海」と名付けたそうです。生まれる前にすでに3つの海は超えているので、これから残りの4つの海も超えての活躍を願っています。

 松本大学での授業は終わり、あとは入学試験関係の仕事のみとなりました。先週あたりから寒波のせいでかなり寒くなり、体調を壊さないよう気をつけています。なかでも怖いのがインフルエンザですが、インフルエンザウイルスなどのウイルスは自分自身では複製能力がないために、生物ではないとされてきました。しかし、自己複製をして生き続けるところは生物の特徴そのものです。以前から、不思議に思っていたのですが、ウイルスを生物とみなす新しい考え方の本に出会い、納得しました。新書ですが、専門的な内容で難解なところも多いものの著者の熱い想いが伝わって来る本です。(守 一雄)


(c)講談社
 

【これは絶対面白い】

武村政春
『生物はウイルスが進化させた』

講談社ブルーバックス (¥980+税)

 三〇年近くも前に似たような本(中原英臣・佐川峻『ウイルス進化論』泰流社1989年刊)を読んだことがあり、同じような内容かなと思ったのだが、全然違うものだった。中原・佐川両氏の本には「ダーウィン進化論を超えて」という挑戦的な副題がついていて、なんとダーウィンの進化論を(少なくとも部分的に)否定し「進化はウイルスが生物間を自由に移動することで起こる」という新しい仮説を述べたものだった。納得がいく面白い仮説だと思ったが、どうやら学術的には評価がされていないらしい。それでも、素人目には面白かったので、その後もこの仮説がどうなったのか気にしていた。

 そんなわけで、今回の本を手にしたのだが、この本はガチガチに学術的な本だった。本書の著者の武村氏の専門は巨大ウイルス学で、まずはその巨大ウイルスの話から始まる。インフルエンザウイルスもそうであるように、ウイルスのよく知られた特徴はとても小さいことだ。1万分の1ミリ程度しかなく、光学顕微鏡では小さすぎて見えない。だから、実はマスクをしてもウイルスは簡単に通り抜けてしまう。ところが、巨大ウイルスは顕微鏡で見えるくらい大きく、サイズだけで言えば細菌レベルである。それでも目に見えないくらい小さいのだから「巨大」というのはちょっとヘンだが、それくらい大きいウイルスだということだ。どんなに巨大でもそれがウイルスであって細菌ではないのは、自己複製ができないし、抗生物質も効かないことなど、自立した生物としての特徴を持たないからである。

 本書はさらに、ウイルスが他の生物の細胞に入り込んで、どのようにウイルス自身を複製していくかのメカニズムを詳しく説明していく。この辺になると、もういろいろな専門用語が出てきて、追いて行くのが大変である。写真やイラストがたくさんあって理解の助けにはなるものの、どれだけ理解できているかは正直言って自信がない。

 「おいおい、進化論の話はどうなったんだよ」と思いながら読み進むと、それは最後の第4章にあった。第4章の冒頭で、武村氏はこう宣言している。「私はこれまで、あえて生物学の常識に真っ向から立ち向かうような本をいくつか書いてきた。(中略)本書のスタンスもまた、これまでのウイルスに対する人々のイメージを、ほぼ百八十度覆そうという試みであり(前著)よりも挑戦的であると、思っている。(p.180)」では、武村氏が主張するウイルスの見方を変える大胆な仮説とは何か。

 それをこの1パラグラフで述べるのはちょっと無理である。そんなことができるなら、武村氏もそうしていたはずだ。武村氏の大胆な仮説を理解するためには、第1章から第3章までを読んで、ウイルスについての最低限の理解をしておく必要がある。もっとも、上に書いたように、かなりあやふやな理解でもなんとかなるとは思う。私もどれだけ理解できているかあやしいものだから。それに、本書の帯には「極上の生命科学ミステリー」とある。ミステリーなのだからネタバレは厳禁なのだ。(守 一雄)

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