毎月1日発行 発行責任者 守一雄
(kaz-mori@cc.tuat.ac.jp)
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先月の27日に近所の病院で結腸癌の除去手術をしました。手術は順調で、術後の回復も早く、明後日には退院の予定です。手術自体は全身麻酔で何も記憶がなく、翌日だけはかなり辛い時間を過ごしましたが、その後は痛みも思ったより残らず、順調に退院まで漕ぎ着けました。
入院前にPLOS ONE論文の校正も済ませ、仕事を抱えずに入院する予定でしたが、せっかくだから農工大でプレスリリースを出そうと思い立ち、大学広報担当に原稿を作って送ったら、広報担当のチェックも入って入院ギリギリまで原稿の作成に追われました。さらには、PLOS ONE側でもプレスリリースをしてくれることになり、そのリリース原稿を西欧人ウケしやすいネタにしようと考えて、「ビートルズのジョン・レノンが自分とヨーコとを“主人・家内”と呼んでいた」という話題をKenjiとEmilyが会話するという久しぶりの「対話書評形式」で用意したのですが、こちらも全然違う案に差し替えられてしまいました。(守 一雄)
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この種の「本当にわかる」というタイトルの本には騙されることが多い。実際に、読んでみるとわかるのは前からわかっていたことだけで、わからないことは結局わからないままになり、自分の知力の衰えを突きつけられることになる。ところがこの本は手術後のまだ体調も完全に回復しない状態で読んだにもかかわらず、本当によくわかった。私の頭もまだ若いということが確認できて嬉しかった。読後には早速、妻に得意げに量子コンピュータについて説明したりしちゃった。
実は読み始めた時に奥付けを見て出版されたのが6年前の2020年と知り、進歩の早いこの分野ではもう古い情報が書かれているのでは、と少し気にもなった。どうしてもこうした分野の解説は情報が早いウェブからのものに頼りたくなる。だが、ウェブ情報は表面的で「なるほどわかった」と納得できる説明がなかなか見つからない。そうした中で、この本では読者の分かりやすいレベルの復習から始めて、本当に著者らの研究開発の現状が理解できるまでをわかりやすく説明してくれている。
全部で6章から構成されていて、第1章では世間一般での誤解を正しながら「なぜ量子コンピュータが必要なのか?」を解説している。第2章では量子の世界が日常世界とは全く違う原理であることを「2重スリットの実験」を通して説明する。第3章では現行のコンピュータの基本原理を説明しながら、現行コンピュータのON/OFFで示す情報の単位を量子コンピュータでは「未確定のままの0〜1を波として保持したもの(=量子ビット)」を情報の単位とすることが説明される。第4章では現行のコンピュータでは解けない問題をいくつか紹介し、それが量子コンピュータなら解ける可能性があることを示す。最後の第5−6章が「では、どうやって量子コンピュータを実現するか」について著者らの光子を使うものを含む4つのアプローチを解説した章である。
まだ、光量子グループは後進のようだが、これだけわかりやすい説明ができる著者ならば、きっと先行するライバルを追い越して、世界の標準にしてしまうのではとワクワクしてしまった。(守 一雄)