小塩隆士
『教育を経済学で考える』
日本評論社
教授
四年生への進級おめで
とう。就職はどうするの?
学生
あっと言う間に最終学
年になってしまいました。公
務員志望なんですが、なかな
か心理職は競争が厳しくて・・・
教授
教育学部なんだから教
員になったらどうなんだい?
学生
ええ、でも学校とか教
育とかってなんかウソくさい
じゃないですか。
教授
たしかにそういう面は
あるな。そういう君にはきっ
とこの本は面白いと思うぞ。
経済学者がきわめてドライに
教育について論じた本だ。
書名にあるように、教育の
目的や機能を経済学的に「冷
徹に」論じている。教育と経
済学ってあまり結びつかない
だろ?だって経済学ってなん
かお金儲けの話ばっかりみた
いだし、教育のほうはお金儲
けみたいなことは徹底して嫌
っているし。
学生
でもいい学校に入れる
ために教育にお金をかけたり
するのも、結局はいいところ
に就職することで元をとろう
ということなんだから、本音
の部分ではお金儲けと大いに
関係しているんですよね。
教授
そう、そういう本音を
隠して建前ばかりを論じてい
るから「学校はウソっぽい」
感じになっちゃうんだよな。
その点、この本はスゴイぞ。
そういう建前を徹底的に排除
して「教育の本質」を暴いて
いるんだ。たとえば、経済学
的に言えば、教育は投資とい
うことになるが、投資の効果
がプラスになるのは一部の優
秀な子どもたちだけなんだそ
うだ。彼らは教育によってさ
らに優秀になるため、「投資の
効果」が大きい。ところが、
実はそうでない大半の子ども
たちにとっては、むしろ早め
に「投資」を打ち切るほうが
トクなんだ。
学生
だったら、どうしてた
くさんの親が子どもの教育に
こんなにも熱心になるんです
か?
教授
著者によれば、「それは
幻想のせい」だ。
学生
うーん、そこまで言い
切っているとすると確かにス
ゴイ。そういえば、心理学っ
て就職にはあんまり役に立た
ないんですよね。僕も「投
資」に失敗したのかもしれな
いなあ。
教授
うん、それを言われる
と弱い。でも、君は就職のこ
とだけを考えて心理学を選ん
だわけじゃないだろ?この本
にも、教育には「投資」だけ
でなく、「学ぶことそのもの
を楽しむ」ような「消費」と
しての意義もあると書いてあ
る。心理学は学ぶことが楽し
い学問なのさ。そうだろ?
(守 一雄)