第39巻第6号                2026/3/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行 発行責任者 守一雄
(kaz-mori@cc.tuat.ac.jp)
https://kaz-mori.jp/dohc/


 先月(2月)半ばの大腸カメラで上行結腸にがんが見つかりました。今月CTで転移の有無を確認してから担当の医師と治療方針について話し合いをする予定です。また、詳細が判明してから報告します。  
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 最近、本が読めなくなってきたように感じて、話題になっている『本を読めなくなった人たち』でも読んでみようかと思ったのですが、こんな時は小説だよなあ、と思って久しぶりに垣谷美雨さんの小説を読んでみました。先に読んだ『墓じまいラプソディ』も面白くて、1日で読み切りました。次に読んだこちらも楽しく読めて、自信を取り戻しました。垣谷さんの小説は2012年くらいから読み始め、11月と2013年1月に『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』をDOHC月報で紹介しましたが、その後は2018年に数冊読んだきり、しばらくご無沙汰でした。現代社会の問題点に独特の視点から切り込む垣谷さんの小説はどれも面白く考えさせられます。垣谷さんの小説は調べてみると28冊出版されていて、10冊が既読でした。残り18冊も読破したいと思います。(守 一雄)

(c)中央公論新社
 

【これは絶対面白い】

垣谷美雨 『マンダラチャート』

中央公論新社 (¥2,068)

 主人公の雅美は子育ても終えて長年連れ添った夫と2人暮らしの63歳だった。メジャーリーグで活躍する大谷選手が高校生の頃から目標を立て、その実現のためにマンダラチャートを作って、一つずつ目標を達成していったことを知り、自分でもマンダラチャートを書いてみた。すると、その中心に書いた目標の部分に身体ごと吸い込まれてしまい、気づいたら1973年の中学2年生の頃にタイプスリップしていた。

 この小説は、63歳の心を持ったままの雅美が中学生から人生をやり直す過程を主人公の視点で書いたものである。中心となるテーマは、女性差別が蔓延する社会での女性の生きにくさで、それを女が我慢して受け入れてきたために、いつまで経っても差別が無くならないのだと考えた雅美は、2度目の人生で違う生き方を選択する。

 そんな雅美には中学校時代に憧れていた男子のクラスメイト天ヶ瀬良一がいた。このやり直し人生でも、天ヶ瀬は同じクラスで輝いていた。ところが、なんと天ヶ瀬も同じようにこの時代にタイムスリップしてきていたのだった。

 雅美が女友達とのおしゃべりの中でうっかり「スマホ」という言葉を使ったことで、天ヶ瀬に気づかれたが、その後は令和時代を知る63歳同士として、昭和の中学生としていかに生きるかを相談しあうために付き合うことになってしまう。心はオバさんでも天ヶ瀬のウィンクにキュンとしてしまうのだが、「中身は中年オヤジなのだ。だから落ち着け、自分。」と雅美が自分に言い聞かせるところは笑った。

 雅美たちが中学生だった昭和時代は今よりもずっと女性差別が激しかった。そんな昭和のいろいろな社会現象を懐かしみながら、女性差別だけでなく、当時の男性社会の中で生きる天ヶ瀬の心情が描かれるところも楽しめる。結局のところ、男女の性役割の問題だけでなく、人生について考えさせられる小説だった。私だったら「2度目の人生」をどう生きようとするだろうか。(守 一雄)

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